原発避難 自分ごと

新潟大学で教員・学生・市民ら学習会
松井氏(右奥)の講演を聞く参加者=18日、新潟大学

 新潟大学(新潟市西区)で18日、「福島原発事故による避難生活を自分ごととして考える」学習会がオンライン併用で開かれ、教員や学生、市民ら40数人が参加しました。

 県「三つの検証」生活分科会座長を務めた松井克浩新潟大学教授と、鈴木浩福島大学名誉教授の講演のあと、参加者は意見を交わしました。

 松井氏は、生活分科会は、福島原発事故が福島県民や避難者の生活に与えた影響を多角的に検証し、「原発事故による生活への被害は極めて深刻で、長期にわたり続き、元の暮らしを取り戻すことは容易ではない」と結論に至ったと強調しました。

 仕事や家族、人間関係など多くの犠牲を払い、「ふるさと」を失った苦しみが続き、時間の経過とともに影響は多様化する一方で、周囲の理解が薄れ、偏見や差別にさらされ、被害者が口をつぐむ状況が生まれていると指摘。

 松井氏は、「ふつうの暮らし」が突然奪われ、避難や生活のさまざまな決断と自己責任が強いられる原発事故を、新潟県民は自分の身に置き換えて考えてほしいと呼びかけました。

 鈴木氏は、原発事故の被害は津波と違い、目に見えずじわじわと、福島県内でも市町村により影響は大きく異なると指摘。原発事故から10年以上経過し、居住・生業の確保、コミュニティや医療の再建など被災者の課題は多様化し、国の「除染→避難指示解除→帰還」シナリオでは対応できないと述べました。

 被災直後から、「ふくしま復興支援フォーラム」を続ける中で、誰一人取り残さず、被災者が主体となる復興を目指し、「生活の質」・「コミュニティの質」・「環境の質」の視点から作成した「県民版復興ビジョン」を紹介。全国で複合災害が頻発する中で、三つの質の課題は全国共通の課題だと話しました。

 意見交換では、学生から「避難者は不安を抱えているのに、なぜ声を上げられないのか?」と質問があり、松井氏は、「避難者は多額の賠償金をもらっている」などさまざまな誤解や偏見の積み重ねで、避難者が「自分たちの苦しみを話してもわかってもらえない」という雰囲気がつくられていると話しました。

 別の学生は、5月に飯館村などを訪れ、あちこちに汚染土の黒い袋が積まれ、復興されていない住宅や農地を見て、住民の声を聞いてきたと紹介。一方で、立派な震災資料館が建ち、多くの人が「震災は過去のもの」のように見学し、今も苦しんでいる住民がいることが隠されているように感じたと述べ、自分ごととして考え、周りの学生に知らせることが大切だと話しました。

 また、「原発事故避難者の実態をもっと知り、伝えることが大切」「大小問わず地域で学習の場をもとう」などの意見が交わされました。(2023年12月22日『しんぶん赤旗』)