JR米坂線の復旧を急いで

豪雨災害1年で災対連が現地調査
雑草に覆われる線路を視察する(右から)遠藤、馬場、森川、稲葉の各氏

 昨年8月の豪雨災害から1年。災害被災者支援と災害対策改善を求める新潟県連絡会(新潟県災対連)は19・20の両日、運休がつづくJR米坂線と新潟県村上市小岩内(こいわうち)集落を視察し、災害復旧の現状と課題を住民から聞きました。馬場秀幸県議(無所属)と日本共産党の遠藤玲子前県議、稲葉久美子村上市議も参加しました。

 19日は地元の「JR米坂線復旧問題を考える会」の森川信夫さんの案内で、村上市の坂町駅から越後下関駅までの被災箇所を視察しました。土砂に押し流された線路はまったく手つかずで雑草に覆われ、周辺の被災道路や農地で復旧工事が進んでいるのとは対照的でした。JR東日本新潟支社は今年4月、米坂線の復旧工事に約86億円、工期約5年の試算を発表しましたが、国や県など地元自治体との協議は進んでいません。

 森川さんは「並行する国道はすぐに復旧したが、米坂線はめどが立っておらず、JR東日本や国の責任で早く復旧してほしい」「その後の米坂線の維持・活性化や駅を地域の拠点として活用する工夫など住民で考えていくことも大切」と話しました。村上市と関川村で住民懇談会を開いていく予定です。

 参加者から「JRが『米坂線からの撤退は考えていない』と明言し、花角英世知事も『赤字路線の存続とは区別して災害復旧すべき』と強調している点が大切」「費用負担(JRが2分の1、国と県市町村が4分の1ずつ)が課題だが早期復旧のためには、もっと国の支援を拡大させることが必要」「あらためて被災状況を見ると線路の復旧は手つかずなのに、周辺の農地復旧や治山対策などはどんどん進んでいる」などの感想や意見が出されました。

 20日は、土石流や流木で6棟が全壊し、全36世帯への避難指示が継続されていて、仮設住宅での生活が続く小岩内集落を訪問。松本佐一前区長などから被災時に一人も死亡者を出さなかった教訓、地域の再建に向けた課題や要望を聞きました。

 当時区長だった松本さんら役員は、1967年(昭和42年)の羽越水害の土石流被害の経験があり、昨年8月3日夜の豪雨で音やにおいの変化を感じて避難を決断し、消防団などと連携して全住民を避難させ人的被害を防いだ教訓を紹介しました。わずか5時間の豪雨で土石流が発生し、大量の流木が家屋を直撃した背景に、急傾斜地の山林が管理・伐採されずに放置されてきたことなどもあると話しました。

 「再び住み続けるには現状復旧にとどまらず、土石流が集落を直撃しないよう砂防ダムなどを『改良復旧』することが必要」とも話す松本さん。

 工事用の仮設道路を復旧後も残して砂防ダムや山林などの管理に活用すること、集落に被害を与えた小さな沢を、集落外に流れる大きな沢へと合流させる流路変更などを県や市に提案・要望しています。東日本大震災の復興特別税は防衛費ではなく、激甚災害の支援に活用できるようにしてほしいとの要望も出されました。

 馬場県議は「経験をうかがい大変勉強になった。住民のみなさんの要望をしっかり県政に届けたい」。遠藤前県議は「復興途上と再認識した。地域を一番知る方々からの具体的な要望は、縦割り行政の弊害(へいがい)を乗り越えて復旧を進めるよう求めたい」と応じました。

 2日間の視察を終え、県災対連世話人の藤田孝一氏は「直接被災地を見て被災者から具体的要望が聞けて良かった。今後の活動に生かしたい」。桑原加代子氏は「小岩内のお話により復旧の課題が整理され、国・県・市のやるべき役割も明らかにされているので、その実行を求めていきたい」と話しました。(『しんぶん赤旗』2023年8月23日)