母親 労災休業補償求め裁判
住民・県労連が「会」つくる
会社からの不当な降格人事などによって精神疾患を発症し、休業と退職に追い込まれた故小黒勝人さん(60歳・2020年12月に死去)。労働基準監督署長による休業補償の不支給処分の撤回を求めて、母親の早川トヨさん(89)が小黒さんの遺志を引き継ぎ、国を相手に処分取り消しを求める裁判をたたかっています。
小黒さんは、新潟県長岡市の鈴民精密工業所で、1980年から金属部品や刃物の熱処理をおこなう熟練工として38年間勤務。2013年からは製造部副部長兼処理課長となり、同業務の管理や社員の技術指導を担っていました。
社長から通告
事件の発端は2016年11月、小黒さんと星由紀子処理課長(当時)が個別に呼ばれた、渡辺広之社長(当時)や役員、社会保険労務士ら5人との異常な面談です。処理課の課員3人から「小黒、星両氏からパワハラを受けた」と申告があったとして尋問されました。
小黒さんは、製品にかかわる重大なミスを繰り返したことへの指導だったと説明しましたが受け入れられず、社長から「何らかの処分をする」と言われました。精神的ショックを受け発熱や動悸、不眠などに悩まされるようになりました。面談が行われた同月に受診した心療内科で、「自律神経失調症」の診断書が出され病休しました。
その後、社長らは小黒・星の両氏に相談もなく同月17日に降格処分、翌年1月に別部署へ平社員として異動を命じました。1月の面談では社長から「戻る職場はない」旨を通告されました。
小黒さんは、労働相談所に何度も相談し、18年2月に降格処分は不当であり副部長の立場での復職を求めて労働審判に提訴。同年6月に、会社側と和解して退職しました。
その後、小黒さんは長岡労働基準監督署に休業補償給付を申請しましたが、19年9月に不支給処分に。再審査請求中に死去したため、母親の早川さんが受け継ぎ、22年6月に新潟地方裁判所へ不支給決定処分の取り消しを国に求めて提訴しました。
リストラ3度
地元住民や県労連ユニオン中越支部は、「星・故小黒氏を支援する会」を結成しています。同社は、2010年からの10年間で3度にわたり非正規雇用や熟練工をリストラしてきました。「会」は、そうした一連の退職強要のなかで小黒・星の両氏に不当な処分を行ったと指摘。労災不支給撤回を求める署名運動などを行っています。
会の高橋剛事務局長は、「原告が要求してきた当時の社長の証人尋問が次回弁論で実現します。業務による心理的負荷が争点なので重要な成果です」と話します。
早川さんは、「息子の名誉のためにも、労災保険を適用してほしい」と訴えます。
次回の口頭弁論は来年3月3日。前社長の渡辺氏の証人尋問が行われる予定です。(2025年1月11日『しんぶん赤旗』)