「実質的な再稼働」住民怒り

東電 柏崎刈羽原発6号機に核燃料装てん
柏崎刈羽原発(奥)とすぐ近くにある集落=刈羽村(2021年2月26日撮影)

 新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼働について東京電力は6月25日、準備が先行していた7号機に代わって、6号機を優先して再稼働させると発表しました。地元同意を得ないまま再稼働の準備が前のめりで進められるなか、市民が怒りの声を上げています。(新潟県・伊藤誠)

「7号機優先」から一転
テロ対策未完成

 「これまで東電が再稼働を目指していた7号機は、テロ対策施設の完成が遅れて10月以降は運転ができません。そこで、6号機を先に再稼働する方針に転換した。しかし、原発の安全のため不可欠なテロ対策施設が完成していないのは6号機も同じで、完成前に動かすなどありえません」

 東電の狙いについてこう話すのは、原発問題住民運動全国連絡センター(原住連)で筆頭代表委員を務める持田繁義さん(日本共産党柏崎市議)です。さらに続けます。

 「東電がこれまで、住民向けの説明会で安全対策を説明してきたのは7号機についてです。地元や住民へ説明もせず、6号機の再稼働へなし崩しで方針転換するのは、住民と安全の軽視です。変更の明確な根拠を示すべきです」

 6号機原子炉への核燃料装てんが始まった6月10日、新潟市の東電新潟本社前には、「規制庁・規制委員会を監視する新潟の会」など3団体が呼びかけた抗議行動に参加する県民約20人の姿がありました。県内44団体による中止要請に応えず、柏崎沖の活断層の影響評価など未了のままの作業開始は「安全最優先」に反すると東電に抗議文を提出しました。

 「監視する会」代表の桑原三恵さんは、「装てんは実質的な再稼働に等しい。県民の疑問と不安を置き去りにして県民の理解を得ないまま、強行したことに強く抗議します」と訴えました。

 燃料装てんは、「国と東電が自治体財政に揺さぶりをかけ、県や市に再稼働判断を急がせる狙いもある」と持田さんは指摘します。

 国は2016年、原発立地自治体などに出す「電源立地地域対策交付金」の仕組みを、国が再稼働しても問題ないと判断してから9カ月たっても稼働しない場合は、交付金を大幅に減額するように変更しました。

 燃料装てんが期間の起点となり、7号機はすでに9カ月以上経過しています。7号機の交付金については、26年度分から県と5市町村で最大計約7億4200万円減額(県試算)されます。6号機も来年3月までに再稼働しなければ同程度が減額される可能性があります。

 国と県による、再稼働への地ならしも加速しています。花角英世知事が再稼働の判断材料にあげてきた柏崎刈羽原発で事故が発生した際の「被ばく線量シミュレーション」(県実施)と、避難方針などを定めた「緊急時対応」(内閣府)が相次いで発表されました。

 6月には2回の県民説明会が開かれ、参加した県民からは大雪などの複合災害時の避難や屋内退避、被ばくへの不安、再稼働ありきの姿勢への批判の声が続出しています。

東電新潟本社前で核燃料装てんに抗議する県民=6月10日、新潟市
県民の声を無視

 14万3196筆の署名を添えて県へ直接請求された再稼働の是非を問う県民投票条例案は、花角知事が「二者択一では県民の多様な意見を把握できない」と意見を付けて県議会に提出し、自民・公明などの反対多数で否決しました。

 花角知事はその後、県民の意見を見極める手段として、県内市町村長との懇談会や公聴会などをあげましたが、6月29日から始まった公聴会は、一般傍聴や現地会場の取材を認めていません。しかも、知事も出席しないため、住民の意見が正確に反映されるのか大きな疑問があります。

 桑原さんは、「公聴会は公正性に欠け、知事の再稼働判断材料として説得力はない。知事は、政府の再稼働日程に流されることなく、県民の命と財産を守る本来の役割を果たすべきです」と強調。世論無視の再稼働の動きに反対して、引き続き声を上げ続けると話しました。(2025年7月20日『しんぶん赤旗』日曜版)

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