原発再稼働に県民の判断を
柏崎刈羽原発 投票条例の制定を求め運動
新潟県の東京電力柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、「再稼働の是非は県民で決めよう」と県民投票条例の制定をめざす直接請求運動が新潟県で取り組まれています。運動の先頭に立つ請求代表者には、医師や僧侶、学生など119人が名前を連ねます。
(新潟県・伊藤誠記者)
新潟市中央区で11月23日に行われた県民投票条例制定を求める署名行動では、多くの市民が署名に応じました。31歳の女性は、「原発は不安です。総選挙ではSNSが若い人の投票につながったように、署名や県民投票を通じて若い人が原発に関心を持つきっかけになるといいですね」と語り、署名用紙にペンを走らせます。
県民有志でつくる「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」(県民投票で決める会)世話人の水内基成弁護士は、原発に賛成・反対にかかわらず、運動の目的が伝わり署名する人が広がっていることは大切だと話します。「署名が県民一人ひとりの政治参加の一歩になり、数が集まれば知事や県議会を動かす力になる」
60%が再稼働反対
同原発は、2011年の東電福島第1原発事故後に運転を停止。政府や東電は6・7号機の再稼働を目指していますが、テロ対策の不備が相次ぎ、21年に原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令を受けました。23年12月に命令は解除され、7号機は原子炉に核燃料を装填(そうてん)。今年6月に検査を終えました。
国や財界からの再稼働への圧力も強まる一方で、県民の不安は高まっています。能登半島で1月に大地震が発生。建設時のままの同原発の耐震設計や、地震や大雪と原発事故が重なる複合災害が起きたら安全に避難できる保障がないからです。
1月末の世論調査では、「複合災害では避難できない」が71%、「再稼働に反対」が60%でした。トラブルが続く東電に原発運転の能力や資格があるのか―。県民だけでなく自治体首長や自民党県議からも厳しい声が出ています。
「地元同意」が焦点
再稼働の手続きが進むもとで、地元同意が大きな焦点となっています。花角英世知事は2018年の県知事選で、柏崎刈羽原発の再稼働の是非は「県民に信を問う」と公約に掲げ当選しました。具体的な方法は明確にしていません。
「県民投票で決める会」は、「柏崎刈羽原発の再稼働の是非を問う県民投票」の実現をめざして、10月末から条例制定の直接請求署名を始めました。12月28日までに、新潟県の有権者の50分の1(約3万6400)を超える20万筆を集める目標です。
会世話人の近藤正道弁護士は、「再稼働は住民の命に関わる地域の重要問題です。直接住民が決める地方自治法が保障する直接民主主義の形である『県民投票』がもっともふさわしい」と訴えます。
署名に広がる賛同
地元新聞の世論調査でも信を問う方法は「県民投票」が57・3%と最も多く、原発の賛成・反対にかかわらず多くの県民が、「再稼働は大事な判断だから、知事や県議会だけで決めるのではなく、県民が決めることに賛成」と署名への賛同が広がっています。保守系の議員や農協の元組合長が、署名を集める「受任者」になり、数十筆を集める動きも生まれています。
署名を集める受任者は選挙権を持つ新潟県民であれば誰でもなれます。署名などの問い合わせは、「県民投票で決める会」025(378)1500か、https://www.kenmintouhyou.net/まで。
請求代表者の若者2人に、運動に取り組む思いを聞きました
知るところから始めたい 佐々木寛和さん(24)新潟市
私たち若い世代が原発や社会のことに関心を持ち、考えるきっかけになれば良いと思い運動に参加しました。原発にかかわる技術も政治も専門的で難しく、私もわからないことが多いです。でも、わからないから賛成、反対と言えないで終わるのでなく、知ることから始めたい。県民署名をそんな機会にできれば良いなと感じています。「知らないうちに物事が決められるのは困る。決めるなら自分たちで決めようよ」と呼びかけていきたいです。
「自分たちで」に共感 寺田恭子さん(23)新潟大4年
「賛成か反対か」ではなく、「自分たちで決める」ための活動という趣旨にひかれ、参加することにしました。大学ではポスターを作成するなど、気軽に活動に参加してもらう工夫をしています。署名をお願いする中で、さまざまな観点からの意見を聞くことができ、自分の考えを深められるのが面白いです。
(2024年12月8日『しんぶん赤旗』日曜版)