上越市 中核医療危機 頼れる身近な病院残して
市民が立ち上がり署名運動
新潟県上越市で、県の地域医療構想により地域の中核病院である新潟労災病院の来年度中の閉院が決まり、市民に不安が広がっています。閉院ありきの再編に対して今年1月、市民が「上越地域の医療を守る会」を立ち上げました。「直江津地域に総合病院を残せ」と署名運動に取り組んでいます。
上越市で第二の人口集中地域の直江津地域にある同病院は、開院から66年になる地域の中核病院です。JRや第三セクターの鉄道4路線が乗り入れる直江津駅から1・5㌔と近く、「JRの駅から歩いていける上越地域唯一の総合病院」として上越市の各地域だけでなく糸魚川市や妙高市など鉄道沿線の広範囲から通院・利用する人が多いのが特徴です。
同病院が閉院すれば、ほかの病院までバスやタクシーを乗り継ぎ行くしかなくなり、高齢者や交通弱者が行き場を失うことになります。
労災病院をめぐって県は、昨年12月の上越地域医療構想調整会議で労災病院を2025年度中に閉院し、手術、入院、外来などの医療機能を市内6病院に移す再編計画を示しました。今年8月30日の調整会議で、労災病院を26年3月末に閉院すると報告されました。
地元住民からは「この病院がなくなると、医者にかかれない」「夫が脳梗塞で倒れ、労災病院に通っている。なくなれば、タクシーで行くしかなくなり時間も交通費もかかり心配」などの不安の声が出されています。
住民ら「会」結成
「会」は、地元住民や労災病院の元看護師や技師など元職員を中心に結成され、地元の町内会長を長年務めた石田秀男さん(82)が代表を務めています。
訪問行動や直江津、高田の市日(いちび)宣伝で市民に署名の協力を呼びかけてきました。石田代表は署名活動を通じて、「安心して頼れる身近な病院を残してほしい」という市民の願いがひしひしと伝わってきていると話します。
労災病院に30年勤めた元看護副部長の馬場洋子さん(83)は、年間の手術は整形外科で1000件、歯科口腔外科で400件以上あり、特に海岸沿いの地域に欠かせない中核病院で「閉院したら患者さんの行き場がなくなる。別の運営になっても病院は残してほしい」と訴え、元同僚らに協力を広げています。
事務局の田村雅春さんは、労災病院の機能をほかの病院に分担するだけでは、それらの病院の多忙化が進み、住民が安心して受けられる医療体制は守れないと指摘します。「現在の場所に総合病院を残すこと、そのために医師や看護師不足に国や県が責任を持ってとりくむことが何より大切です」と話します。
再編の見直しを
9月9日に「会」は県庁を訪れ、花角英世知事に対して署名1万4740筆を提出しました。
石田代表らは、「交通の便の良い病院を残して」の声が多いこと、26年3月の閉院は上越地域の患者や病院に大混乱を起こすため延期すべきなどと訴えました。また、慢性期病床を周辺病院に分担させる中期再編計画では、交通の便が悪い病院が多く、計画の見直しを求めました。(2024年9月14日『しんぶん赤旗』)