柏崎刈羽原発再稼働 募る不安
原発市民検証委がシンポジウム
原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の運転禁止命令を解除し、再稼働に向けた議論が始まろうとしています。新潟県の原発市民検証委員会は21日、新潟市内で県の「三つの検証」委員会委員を務めた専門家を迎えシンポジウムを開き、原発の安全性や避難の実効性などを議論しました。
シンポジウムをには、300人が参加しました。
進行役の佐々木寛・新潟国際情報大学教授(元・検証総括委員、避難委員会副委員長)は、能登半島地震を受けて13日に実施した市民検証委の県民世論調査では、柏崎刈羽原発の再稼働に「反対」が60・54%と「賛成」の18・17%を大きく上回り、「安全な避難はできない」も70・26%と、原発への不安が高まっていると紹介し、県民自ら再稼働の議論に参加することが必要と強調しました。
元・検証総括委員長の池内了名古屋大学名誉教授がオンラインであいさつ。柏崎刈羽原発の安全に資するため発足した「三つの検証」を不十分なまま終了し、県技術委員会で審議中の柏崎刈羽原発の安全性の確認内容も報告しない花角英世県政に対し、再稼働問題を広く県民が議論し、意見を上げていく運動を広げようと呼びかけました。
国や東電任せで命を守れるのか
立石雅昭・新潟大学名誉教授(元・技術委員)は、能登半島地震を起こした能登半島から佐渡まで伸びるひずみ集中帯は、10年以上前からM7・6程度の大地震が予測されていて、次の地震の恐れもあると指摘。原発の原子炉格納容器や建屋は建設時の耐震設計のまま補強されておらず、能登半島地震では燃料プールの水があふれるトラブルも発生し、この地震ではなぜ新潟市まで大きく揺れて被害が出たかなど、未解決の問題が多い中で原発を動かしていいのか、国や東電任せで命を守れるのか考えるべきと訴えました。
大河陽子・弁護士(元・避難委員)は、原発事故の避難計画は被ばくから住民を守ることが目的だが、避難委では避難計画にもとづいて避難した場合にどのくらい被ばくするのかという点の検証はできなかったと指摘。地域を一番知る住民自身が、県や自治体の避難計画で家族や地域の安全を守れるか、避難路は土砂崩れや大雪など危険はないか、介護が必要な人の避難はできるかなど実効性ある避難ができるか考え、見えた課題を行政に意見することが大切と話しました。
福島事故から教訓を引き出せ
松井克浩・新潟大学教授(元・検証総括委員、健康と生活委員会副委員長)は、福島原発事故が与えた避難生活への影響の検証は「被害は極めて深刻で、長期にわたり続き、元の暮らしを取り戻すことは容易ではない」と結論に至ったと強調。能登半島地震は原発事故が起きても避難はできないことを明らかにしたが、避難できても原発事故の避難生活は長期かつ過酷で、偏見にさらされ、自己責任を強いられるもので、自分の身に置き換えて考えてほしいと呼びかけました。
柏崎市の高校生が発言し「原発関係で働く家族のいる同級生がいたり知識不足で友人と原発が話題にならないが、今日の話を聞き『自分ごととして考える』大切さを知ることができた」と話しました。(2024年1月26日『しんぶん赤旗』)