安全性など検証なく「県総括は欠陥報告」

十日町市での市民検証委員会
県総括報告書の問題点などを指摘する池内氏=17日、十日町市

 新潟県の市民と専門家が東京電力柏崎刈羽原発について独自に検証を進めている市民検証委員会は18日、十日町市で対話集会を開き約70人が参加しました。県検証総括委員会の前委員長の池内了(さとる)名古屋大学名誉教授が、県が発表した総括報告書の問題点を指摘しました。

 池内氏は、専門家による「三つの検証」総括検証委を解任し県職員がまとめた県の総括報告書は、目的が新潟県の原子力事故の検証から福島原発事故の検証にすり替えられ、柏崎刈羽原発の安全性や避難計画の実効性、東電の適格性などの検証がなく、「総括とは言えない欠陥報告書だ」と批判しました。

 原発事故の機械の破壊の原因は地震動か津波か、水素爆発がどこで起きたかなど、事故原因が不明のまま両論併記では、柏崎刈羽原発の改良に繋げられないなどと指摘。各委員会でカバーできない問題は合同委員会などで議論を尽くす総括検証の目的が果たせていないと述べました。

 健康・生活委員会前委員の木村真三獨協医科大学准教授は、健康分科会の検証では、甲状腺がんへのヨウ素131の影響が過小評価されていると国際論文の問題点を指摘したが、県の報告書はその国際論文の引用をつけて被ばくとの関係が少ないとミスリードしていると指摘しました。

 池内氏は、十日町市は風向きや風評被害など事故の影響を大きく受ける地域で、他人事でなく原発に向き合う覚悟が必要と強調。10月発行の市民検証パンフレットや対話集会などで県民の議論を高めようと呼びかけました。(『しんぶん赤旗』2023年9月23日)